life

とらわれずに暮らしていく

出口と入り口

ひまわりを植えている圃場は3方を山で囲われ1方だけ道路に面している

山側には2つの谷があり沢が一つと水路が1つ

道路の向こう側には牧場があり少し離れた南側に牧場がもう一つ

背負っている山ははるか向こうまで山が続いている

 

野生動物は水場を中心にして動いている

飲み水の為、体に付く寄生虫を落とす為に水場は必要でもある

谷沿いの沢を登っていくと動物の足跡だらけ

使いやすい水場には縄張りが無く

幾つかの水場を中心に放射状に足跡や獣道が続いている

おもしろいのは獣道に付いている足跡は一方通行のように蹄の跡が揃っている

多分動物は安全が確保されたパターンはよほどのことが無いと崩さない

基本的に入る場所と出る場所は決まっていて

危険を感じたり、追われたりした時だけとんでもない所から逃げていく

 

圃場を囲む柵の中に上部が外側に曲がった柵が何か所かある

f:id:satoyamanoyume:20180313195112j:plain

不思議なのは内側に曲がった柵は一枚もなく、全てが外側に曲がっている

でも、そのどれもは山側の傾斜地だけ

下を掘ったり、柵を捻じ曲げてくぐってきているのは水に面した柵だけ

そしてそこにある足跡は入ってくる場所と出ていく場所が決まっていることを示すように蹄の向きが揃っている

 

シカは2メートルの柵くらい易々と飛び越えるジャンプ力を持っている

イノシシも前足が掛かるくらいの所なら容易く飛び越えるという

しかし、柵を飛び越えて侵入してきた形跡は見られない

たまに柵を抜けられずに死んでいる動物を見ることがある

シカであれイノシシであれ引っかかって死んでいるのはすべて柵の下側

柵を飛び越えて侵入してくるなら引っかかれば柵は内側に曲がるだろうし

引っかかって出血するものもいるはず

だけど、内側に血痕を見たことはないし、柵の上部に引っかかっている動物を見たことは無い

 

ほぼ決まっている出入口と侵入パターン

圃場を横断して山に帰っていく足跡

緊急時にしかリスクを冒さない動物の本能

この辺りに重要なカギがありそうな気がする

それは補修に使った孟宗竹とトタンが教えてくれた

 

無力感

f:id:satoyamanoyume:20180316185114j:plain

ワイヤーメッシュを張り終えたわずか数日後
柵の見回りに行くとこのような状態

それも1か所ではなく何十か所も柵がひん曲げられているし

溶接部分がバラバラになっている

f:id:satoyamanoyume:20180316185303j:plain

柵の下に穴を掘りそこから侵入した後もある

侵入後を見つけるたびに補修の繰り返し

鉄筋を撃ち込んで穴を塞ぎ、トタンで目隠しをする

f:id:satoyamanoyume:20180316185420j:plain

f:id:satoyamanoyume:20180316190420j:plain

図書館で借りてきた本を読み漁り、講習会に出向き

良いという対策があれば取り入れた

しかし、偉い先生が言うように毎日見回りに行くのは不可能

目隠しにトタンを張ればいいといわれても

全部に目隠しをするには膨大な費用が掛かるし

そもそも耕作放棄されかかっている農地に対して、そんなモチベーションは続かない

 

ある時を境に集落全体にもあきらめのようなムードが出てきた

自分の田んぼは守るけど、集落全体の事なんて関係ないという空気

それはしょうがない事かもしれない

狩猟やジビエが話題にはなってるけれど

この無力感はこの場に立ったものにしかわからない

手を汚さず、汗をかかず、上っ面だけに飛びつく人たちは解ったような事を言う

「解体ショーをしてBBQをしたら人が来ますよ」とか

ジビエを促進して消費を増やせば仕事になる」とか

それは、五分で渡り合っていればの話

あまりにもくだらないのでそういう集まりに行くのもヤメタ

講演会に行くことも本を読むこともヤメタ

 

現場で起きていることは学問やムーブメントでは決して分からない

学問やムーブメントは人間の立ち位置から見た事

イノシシやシカがどう感じ、どう行動したら安全なのかを考えないと

堂々巡りはずっと続く

力vs力 数vs数 では対抗することはできない

先ずは、相手を知り、考えを読み、パターンを予測すること

自分が動物の立場だったらどういう風に行動するのかを考える為

毎日のように歩き回って観察した

 

大まかな事が分かるまで3年くらいかかったけど

そこを利用すれば侵入を塞ぐ事ができるという事が分かってきた

野生動物は人間が思うより臆病だという事と

彼らは健康体でなければ生存できないという事

この2つを脅かすものには簡単には近づかない

そして学習能力があるという事

このことを踏まえて作戦を立てればうまくいくというラインが見えてきた

 

 

 

 

野生動物

野生の動物は全般的に憶病な生き物だと思う

毎日のように圃場に出ても明るいうちに出会う事は殆ど無い

足跡やフンなどの痕跡はあるし、土を掘り返した後は至る所にあっても

直接ご対面という事は滅多にない

 

見晴らしのいい圃場に出てくるという事は

身を隠す場所が無いという事

草食動物(シカ ウサギ)などは視野が広いのでたまに見かけるが

雑食動物(イノシシ 狸 キツネ)などはあれだけの時間圃場にいても出会わない

猪突猛進という言葉があるけれど、それは追い込まれた時の話であって

普通はむかってはこない(子連れの母イノシシは別)

動物が侵入してくる場所の条件の第一は

解らないように入れて、解らないように出ていける場所

第二に餌の近くに身をひそめることのできる場所があること

第三に子供の時に親から教えられた場所

つまり、安全で身をひそめる場所があって逃げ道が確保されている所にしか

動物は簡単に入ってはこない

 

これはワナを仕掛けてみるとよく解かる

箱罠にウリ坊しか入っていないという事がよくある

ウリ坊は単独では行動しないので必ず親が近くにいるはずなのに

ナゼかウリ坊だけが罠にかかる

成獣のイノシシは餌だけにつられるようなヘマはしない

何日の何日も罠の周りを徘徊し絶対に安全だと確信するまで罠には入らない

成獣のイノシシが罠にかかるのは大体子供と一緒の事が多い

子供が罠の中の餌を食べ安全に出てきたときに初めて罠への警戒を解く

それくらいイノシシは憶病な生き物であると言える

 

ちなみに親を捉えるならトリガーの高さを上げた方がいい

成獣の平均体高は40cmくらいなので地上から40センチのところにトリガーの糸を張る

ウリ坊しか入らないのはトリガーが低すぎる為で

ウリ坊の届かない所に糸を張らないと何度やってもウリ坊しか採れない

ウリ坊の入った罠には親は決して近づかない

おなじ場所に罠を仕掛けても成獣が取れることはほぼ無いと言える

 

これらの事を考えても野生動物というのはとても慎重なのだと言える

だからこそ安全が確認できた場所には大胆に入ってくる

そして敵(人間)が来る前にできるだけ多くの食べ物を食べようとする

2町(2000平米)を超えるヒマワリが2.3日で食べつくされてしまうのもその本能

その本能を力で押さえつけるのはなかなかムツカシイ

鉄砲という道具もあるけれど

許可された時間には動物は安全なところで昼寝している

ワイヤーメッシュは力業に力業で対抗するようなもの

野生動物に力業で挑んでもあちらの方が1枚も2枚も上手であることが

メッシュを張り終えたすぐ後に判明する

ワイヤーメッシュ

2011年自治体の獣害防止対策補助でワイヤーメッシュで圃場を囲むことになった

ひまわり畑の周辺は周囲約2キロ

素掘りの水路と自然の川に囲まれた圃場にはコンクリや石の基礎は無く

水路脇や畦に支柱を建てるしか方法は無い

日数にして延べ30日軽トラも入らない狭い道を

ワイヤーメッシュと鉄筋の支柱を抱え歩いて運ぶしか方法は無い

f:id:satoyamanoyume:20180309195939p:plain

ワイヤーメッシュは2メートル四方、支柱は20mmの鉄筋でドブメッキがしてある

これを担いで山の中を何往復もして張っていく

支柱を撃ち込む機械はあるにはあるけど結構高価だし、エンジン付きの重い機械を

持って歩きまわるのはシンドイので打ち込み気を自作した

スライドハンマーの原理を応用した杭打機は長さを2メートルで作っているので

バカ棒の代わりにもなる

 

約1か月かけて地区の圃場に網を張った

その時入った森の中は悲惨な状態

縦横無尽に獣道はあり、下草は殆ど無くあちこちに大きな穴が掘られ一抱えもある岩が

動かされている

食料を供給してくれない森に潜むより、おいしい餌を供給してくれる圃場に出てくるの

は当たり前の事

 

3キロ強の網でぐるりを囲われた圃場

水路際あり、河川際もあり、傾斜もある

防除設備は設置するだけでは終わらない

見回りやメンテナンスをしないと1か所がやられただけで全滅の憂き目にあう

平均年齢70歳を超えるこの地区で果たしてそれができるのか?

これから人が減っていくのは確実

とりあえず補助事業としてやってはみたものの

どうやって維持管理までしていくのか、肝心なとこは先送りのまま

 

 

イノシシ対策

今年は体の不調のため7月半ばに入院、今も病院にいる

自分の目で見る事が出来ないのでいまいち確信は持てないが

息子の話ではイノシシやシカがひまわり畑に侵入した形跡は無いという

 

周囲を山に囲まれその山はほとんどが針葉樹の人工林

耕作放棄地が万遍なく広がるこの圃場はイノシシやシカにとっては天国

去年まではヒマワリのほとんどを喰いつくされ

餌場を作っていたようなものだった

画像に含まれている可能性があるもの:空、雲、植物、草、木、山、屋外、自然

立毛で熟したひまわりを見るまで12年

その間に味わった「負け」の記録を残しておこうと思う

同じような場所で農を営む人や同じような思いをしている人に

少しでも参考になればと思う

 

少し皮肉を込めて言わせてもらえば

大学のエライ先生の講演や本を読んでもほとんど対策にはならないし役に立たない

ナゼかと言えば彼らはリアルな現場には立っていないし

作物の被害に会って泣くような思いをすることが無い

学者のハナシはあくまでも学問で会って実践では無い

ちなみにあらゆる本を読んでも書いていることはほとんど同じ

巻末に電気柵のメーカーや忌避剤のメーカーの紹介と連絡先が載っているのも同じ

メーカーも「効果を保証するものではありません」と謳っているので

こちらもまた同じ

 

農業に従事している人の数は着実に減っていく

ということは、それ以前に農地周辺を管理していく人はもっと減っている

いかに簡単に、安く防除ができるのかを考えなければ農地は維持できない

12年かけて辿り着いた方法は、これからも進化していく

一応結果の出た2017年までの事を参考までに残しておこうと思う

 

田植機改造

ずっと以前に貰った(ビール1箱と交換)田植機を管理機に改造する計画

この5年くらい試行錯誤してできたヒマワリの無農薬栽培を

もっと楽に簡単にできる方法として

以前から乗用の田植機を管理機に改造して使おうとは考えていた

長い距離を歩くのが難しい体になってしまったので

なるべくなら乗ってできるような楽なものがイイ

幸い新しい田植機が手に入ったので、こいつを改造することにした

f:id:satoyamanoyume:20180123190424p:plain

貰ってきた時からすでにかなりのシブさがあった機械だけど

1年間ブルーシートをかぶせていたせいで

ますますお化けのような雰囲気を漂わせている

エンジンはガソリンを抜いていたのですんなり掛ったけれど

クラッチが全然切れないし、油圧のプランジャーがおかしくて油圧がかかったまま

とりあえずクラッチを直さないと危ないので現場でクラッチを外して工場で分解

今の田植機はクラッチが付いていない

動力制御はHSTという油圧の無段変速

解りやすく言えば今の車のCVTみたいな感じで

前進とバックはレバー一つで動くようになっている

確かに便利にはなったけれど、壊れたらユニット交換しか無く

田植機本体くらいの値段がするというビンボー人にはオソロシイもの

修理できないわけじゃないけど、部品が単体で手に入れるのがすごく難しく

まぁだいたい壊れる頃には「生産廃止」で修理できないという事が多い

 

持って帰ってきたクラッチをバラしてみると湿気が入ったのか年数のせいか

プレートが錆びでガッチリ固着しているけれど、原因が分かれば修理は簡単

分解してさびを落とし煽動部分にグリスさしてやれば元通りになる

それにしても驚いたのはクラッチがツインプレートだったことと

f:id:satoyamanoyume:20180123193319j:plain

製造年が昭和56年1月14日だったこと

f:id:satoyamanoyume:20180123193354j:plain

昭和56年といえば1981年だから37年前

俺がまだ12歳の頃の機械になる

前の持ち主はスゲェ奮発してこれを買ったんだろうな

だから大事にして田んぼをやめるまで大切に使ってきたんだと思う

こういう思いを受け継いでいくのも農で大切にしたいところ

便利で早くて快適なのも良いけど

そんなチャラチャラした事だけじゃ本質には届かないような気がする

 

役目は変わるけどもう少し俺んところで頑張ってもらおう

ポンコツでもやり方次第でどうにでもなるって証明してやろう

 

 

わらびもち その2

前回掘ってきた蕨根

f:id:satoyamanoyume:20171229113207j:plain

コレを臼と杵ですりつぶして濾した液体を

水でさらすこと5回

どうにか蕨粉らしきものが採れました

f:id:satoyamanoyume:20171229113524j:plain

その量は20g弱

掘ってきた根の重量は測ってはいないので歩留まりは解りませんが

籠1杯の根っこからおちょこ1杯分の蕨粉になりました

葛とは違う少しグレーがかった色

蕨粉を目にすることはなかなか無いし

蕨粉として売っているものが100%混じりけなしなのか定かではないので

本来どういうものかというのはハッキリしませんが

正真正銘天然の蕨根から作った蕨粉とはこういうものでした

 

葛よりも掘るのは楽だし、モノが大きくないので潰すのも楽ですが

やはり手間が掛かるし時間も掛かることには変わりありません

こういうものを作っていると

自然エネルギーを利用した動力があったら楽なのにと感じます

昔はどこにでもあった水車小屋や川の水の濾過槽があれば

もっと簡単で楽にこういうことができたはず

自然エネルギーを捨て便利なものに代わってしまうと

コストに見合わないこういうことは切り捨てられてしまう

結局は葛粉のような物とか蕨粉のような物が主流になり

本物を手にすることが難しくなってしまう

結局最終的に製品にする作り手や食べる消費者自体が

葛根や蕨根を掘ったことも見たことも無い人たちのになって

どれが本物でどれが偽物かもわからない状態で進んで行く

現場に立ち自然と渡り合っている側からすれば

何かタチの悪いコントを見せられているような気がします

 

薬膳だの漢方だの陰だの陽だの言われても、わからないし興味がない

ただ、クソ寒い中で根っこを掘り起こし叩き潰して

手を悴ませながら水に晒す

その体力とメンタルがあれば、講釈なんてドーデモイイと思います