life

とらわれずに暮らしていく

良いあぶら

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近頃テレビでミランダカーがウーロン茶のCMをしている

ウーロン茶を飲むとハラが痛くなるので飲まないし

ウーロン茶を飲んで嫁さんがミランダカーになるわけじゃ無いからドーデモいい

ナイスバディにばかり目がいくけれど、内容的にはイイ事を言っている

「あぶら」は多すぎても少なすぎても良くないから

適量の「あぶら」を毎日摂る必要があるという事

世界的なミスコンのアドバイザーの本にも同じようなことが書いてあった

脂質は必須栄養素なので必ず摂取しなくちゃいけないものだけど

良質なものを適量に摂取する必要があって、何でもいいわけじゃないという話

 

この頃は「糖質制限」だの「脂質制限」だのという話をよく耳にする

でも食べ盛りの子供がいれば、おのずと油モンが多くなるし

実際に3食米の飯を食い、昼にはメンのおまけもつく

いわゆる成人病にならない食事とはかけ離れた食生活をしてるけど

この20年ほとんど体重は変わらないし、服のサイズは30年変わっていない

健康診断で引っかかることも無く、悪いのは腰だけ

内臓脂肪も体脂肪もほとんど変わらず、コレステロールも増えない

まぁそんなことを気にするヒマはないし、ケンコーオタクじゃないからどうでもいい

 

仕事上、多種多様なオイルを扱うことは多い

オイルに求められるのは潤滑性と清浄性

オイルを入れないでエンジンを回したり、ギアを回転させたりすると

5分もしないで金属は焼き付き動かなくなってしまう

清浄性だけを考えたら酸やアルカリの溶液の方がずっとヨゴレは落ちる

でも金属に対して攻撃性の強いものは使えない

これは手を洗うのにも共通している

グリスやスラッジで真っ黒になった手を洗う時、普通はアルカリ性の石鹸を使う

なかなか1回では落ちないので何度も洗ったり、お湯を使ったりしていると

手がボロボロになってひび割れてくる

これはエンジンなどをバラシて洗う時も同じ

アルカリ性の洗浄剤は鉄に対してはそれほどでもないけれど

アルミに使うにはかなり神経を使う

一番いい方法は、いいエンジンオイルを温めながら使う方法

これだと金属に対する攻撃性は無く、汚れも綺麗になる

ただ、ちょっと時間がかかるけど

 

エンジンと体は同じじゃないことは解ってる

でも、酸化したタールや焼き付いたスラッジを安全に落とすということは

体の中に残っている不要なあぶらを落とすという事と同じじゃないかとも思えてくる

ただ、油汚れはいい油でしか安全に落ちないということは事実でもある

 

ひまわりや菜種を作り出してからは、市販の食用油は使ったことは無い

食に拘らず、酒もたばこもやるけど

肝機能や腎機能は若い時と変わらないし、成人病の予備軍に入ったことも無い

これは嫁さんも82になったおふくろも同じ

もちろん多少のストレスと肉体労働も無関係ではないとは思うけど

自分で作った油を食べていることと関係してるのかもしれない

まぁ、これは多分に依怙贔屓な面もあるんだろうけど

 

 

 

 

 

 

仕事とは

ダチの大工が作った寄木細工の箱

無垢のフローリングの残材を使って仕事の合間の作ったという

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小さな寄木の寸法は0.1ミリまで測れるノギスでは全部同じ寸法

でも、0.1ミリ以上の精度が無ければ隙間なく木を組むことはできない

髪の毛の太さは大体0.03ミリ

髪の毛も入らない隙間で組まれた寄木の精度は0.03ミリを超えるもの

それを手カンナで調整しながら組んでいくものらしい

 

本当にカネのかかったエンジンやギアを組む時

1000/1まで測れるマイクロメーターとダイヤルゲージを使いながら組んでいく

でも、1000/1の精度は気温や湿度で変わるし、体温でも微妙に変化する

クリーンルームでなければ計測機器で1000/1まで測ることは不可能だし

F1でもなけりゃそれほどの精度は必要としないし、そんな設備は無い

100/1を超える精度を普通の状態で図るのは不可能だけど

100/1では高出力のエンジンを組むことは難しいし

この寄木を作ることはできない

 

ダチも俺もそれほどの精度を求められる仕事を受けたことはない

この箱に100万払うお客さんはいないし

エンジン組むのに青天井で予算をくれる人はいない

商売的には必要のない技術なのかもしれないけど

これは心意気やプライドの問題

恥かしくない仕事をするという職人の矜持の問題だと思う

 

この頃はウスッペラい話ばかり聞くし、それの方が耳目を集めて儲かってることが多い

でも、どちらがカッコイイかと問われたら答えは決まってる

手の記憶というのは、学校にいったって、1年や2年やったって身に付かない

ストーリーやバックグランドなんてどうでもいい

クオリティを追求する人間にそんなものは通用しない

仕事とはそういうモンだと思う

 

 

 

あと10年

腰痛で動けなくなって10日余り

これほど外に出なかったのは、最後に入院して以来の事

寝ることもできないほどの痛みは少しずつやわらいできたけど

まだ、歩くことは難しい

ギックリ腰とは比べようもない痛み

神経の中に針金を入れられてグリグリされているような感じ

年に何度か出てくる症状だけど、今回はひどい

 

覚悟はしている

手術をしてから今まで

いつか、仕事ができなくなる事やまともに歩く事ができなくなる時がくること

いつ訪れるかわからない恐怖はずっと居座り続けている

家族に対する責任、お客さんに対する責任、やり続けてきたことへの責任

怖いという気持ち、逃げ出したいという思い

それを忘れさせてくれるのは、一心不乱に何かに取り組んでいる時だけ

それが無くなれば、病気には立ち向かえなくなる

 

やっと、少しは動けるようになった

すぐに動けるようにはならないけれど

預かっている車は直さなきゃ

じっとしていたら、頭がおかしくなりそうになるし

恐怖に押しつぶされそうになる

自分がダメ人間になったように感じるし、二度と立ち上がれないような気がする

 

もし神様がいるのなら、土下座をしてでも頼みたい事がある

あと10年でいい

あと10年すれば、一番下の子が18歳になる

親として一応の子育ての責任は果たせる

そしたら、やっと手に入れたメルセデスコンバーチブルで旅行に行きたい

皮のトランクをトランクキャリアに括り付けて

ボロボロの革ジャンを羽織って

ジジィとババァで、白いメルセデスの屋根を開けて走りたい

あと10年、10年でいい

 

お仕事

動かないトラクターの修理を依頼され

とりあえず見に行くと、そこにあるのは英国フォード製の3910というタイプ

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数年動かしてなくて、もちろんバッテリーは上がってるし

ラジエターの水も入っていない

オイルは入っているけれど、触ってみるとスラッジのザラザラが手に付く

燃料フィルターは真っ黒ケ

エンジンが掛からないので水漏れもオイル漏れも特定できない状態

とりあえず新品のバッテリーを調達してからということで、待ってもらう事に

 

このトラクターのバッテリーは専用品で、代替品が無い

見た目や幅は国産のEタイプとそっくりだけど、高さが微妙に違う

純正品の定価は、ナント¥75000

トラクターを買うと思えば安いけれど、それにしても高い

いろいろ探し回って見つけたバッテリーは定価¥38000

そのバッテリーをもって取り付けに行く

 

バカでかいバッテリーはエンジンの上についている

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腰の悪い人間にとっては、一発でヤッちゃうような高さ

とりあえずバッテリーを付け、カラになったラジエターに水を入れて、キーを回す

エンジンはガラガラとディーゼルノックの激しい外国製ディーゼルの音

水温が上がるまでアイドリングをしながら点検をしていく

ファンベルト  ダメ

ラジエターホース  ダメ

燃料計 動かない

アイドリングでチャージしない

でも思ったより悪くは無さそう

ウオーターポンプも大丈夫そうだし、オイル漏れもしていない

PTOの油圧も正常に作動しているし、オイルシールも漏れてはいない

 

後は動かして負荷をかけた状態でどうなるか

換えなきゃいけない部品と、様子を見る所をオーナーに伝え

仕事は終わり

こういう働く機械は何かカッコイイ

性能は日本のメーカーの方が遥かにいいのだろうけど

ジョンディアやフォードの機械は何故か惹かれるモンがある

複雑な車

フォルクスワーゲンゴルフR32 V6 4motion DSG

ゴルフにも色んな車種があって、普通のゴルフはFFの4気筒

GTIなどのスポーツモデルもあるけれど

普通のよく見るゴルフは大体4気筒のオートマで普通のやつ

でも、この車はチョット違う

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エンジンは挟角V6 3.2リッター 250馬力

DSG(デュアル クラッチ ギアボックス)という2ペダル6速MT

おまけに4輪トルク配分のアクティブトランスファーが前後に付いているという

とても複雑な作りの車

20年以上前に初めて乗ったゴルフと比べれば隔世の感がある

 

整備の内容はエンジンオイルの交換とミッションオイルの交換

フロントドライブシャフトのオイルシール交換という普通の内容だけど

こういうトンガッタ車は結構繊細な作りをしているので

普通のオイルというわけにはいかないし

小さなボディにV6エンジンと4駆のシステムが組み込まれているのでスペースがない

別の車の車検が終わったので取り掛かることになったけど

今日はミッションオイルを抜いて量を計り、ドライブシャフトを外すとこまで

この頃の欧州車はトリプルスクエアという特殊なボルトを多用しているので

特殊工具のオンパレード

下手に使うとボルトの山がすぐに舐れてしまうので時間もかかる

 

でも、うれしいよね

こんな看板も上げていない場末の車屋に、こんな車を預けてくれる人がいるという事

もっと勉強しなきゃ、ずっと勉強しなきゃって思う

もっと先へ、もっと前へ、

何でも一緒だと思う

 

時代遅れの・・・・

知り合いの製油所に搾油を頼んでいたヒマワリの種

今の時代、搾油に2か月も掛かるなんて時代遅れかもしれない

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熊本にある「あぶらや」は仲間の同級生の爺さんがやっている所

今は仲間の同級生が3代目としてやっている

お世辞にも綺麗とは言えない製油所

古式圧搾絞りという昔からのやり方で油を搾り

熱湯で油を洗うという何とも古いやりかた

最後の精製や湯加減、洗う時間やタイミングは、爺さんの勘で決まる

 

こういうやり方で油を搾ると歩留まりは悪くなる

ヒマワリの場合は重量比1割にも満たない

一緒に送ってくる油粕の袋には油染みが全体覆うくらい染みている

歩留まりを上げる方法はいくらでもある

最新の搾油機なら悪くても1割五分から2割

薬品抽出なら2割から2割五分

でも、本当に上質な油はこのやり方でなければ絞れないと爺さんは言う

 

「油になればなんでもいいんじゃないの?」という人もいるかもしれない

「たくさん絞れて、たくさん売った方が儲かるじゃん」っていう人もいる

でも、俺はそれは違うと思う

ヒマワリを楽にたくさん作る方法は知っている

梅雨の鬱陶しい中、真夏の炎天下、ヘロヘロになりながら草と戦わなくても

真四角のきれいな圃場で、イノシシやシカと渡り合わなくても

ヒマワリを作り、多くの収穫を得ることはそれほど難しいことでは無い

利益を追いかけるのは悪いことじゃ無いし

手間をかけずにラクをするのはダメなことじゃ無い

ただ、そればかり追いかけると大切なことが見えなくなる

見て見ぬ振りをして、自分を正当化したくなる

人間っていうのはそういうもの、もちろん俺の中にもそういうものはある

 

2町以上ある耕作されない日当りの良い田畑

山から湧く一番水でコメを作ることのできるのに、誰も手を付けない水田

50年生を超え限界にきている植林された木々

一度も貨車が通ることなく忘れ去られようとしている廃線やトンネル

利益を追い、自らを正当化し、共生の道を外れた豊かさは

人々を躍らせるだけ躍らせた後、潮が引いて行く様にすべてを置き去りにしていく

それが便利さであり、快適さであり、豊かさであるなら

マネーという怪物が作り上げた架空のものでしかないような気がする

怪物が食いつくした後に残るのは何もない荒野

もしくは、フクシマのような人間にはどうすることもできない廃墟しか残らない

 

いくら俺が踏ん張ったって、所詮は小さなムシケラ

ただ、自分自身は間違いを犯さぬよう、何がボーダーなのか考えていくしか無い

ヒマワリの油はただの食用油じゃない

この油の先に透けて見える世界は、欺瞞と虚構の世界

そんな世界で踊らされるのはマッピラゴメン

俺は地に足を付けて生きていく

五感から感じるものだけを信じながら

たとえそれが時代遅れだとしても

 

 

 

 

 

 

こんな事もある

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珍しく修理の車で工場は満車状態

1台は原因不明の音がするというB170

もう1台はガソリンが漏れているというC200

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C200の方はすぐに原因が分かって、部品待ち

B170は何とか音の元に辿り着いたけれど、なぜそうなってるのかイマイチ

こういう修理は、原因をつかむまでが一番時間を食う

エンジンが掛かっている状態で常に音が発生していればいいんだけど

出たり出なかったり、水温や油温とも連動していなくて

気まぐれに何の前兆も無く「パカパカ」音がする

スロットルを開けても閉めても音は変わらず、急に音がしなくなる

 

あたりを付けたのは「パージバルブ」という部品

車から発生する「気体」は排気ガスだけではなく

燃料タンクから蒸発する可燃性ガスと

エンジン内部の部品煽動から発生するブローバイガスがある

どちらも大気に開放することは禁止されているので

インテークマニホールドに配管で繋がれ、吸気された空気と一緒に燃やされている

ブローバイガスは圧力があり、エンジンを回さないと発生しない為

ワンウエイバルブでインマニに接続されているので電気的な仕掛けは付いていない

一方、タンクから蒸発した可燃性蒸気は

一度活性炭の入ったキャニスターに貯まり、匂いを除去した後でインマニに送られる

このガスはキャニスターの圧力で

電気的に制御されたポンプによって強制的に吸い出される仕組み

でも、エンジンルームを見渡しても、パージバルブらしきものが見当たらない

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B170に積まれたこのエンジンはほぼ真横に搭載されていて

上から見てもエンジン本体はほとんど見ることができない

聴診器を頼りにパージバルブの位置を探すと

このタコの足のようなインマニの裏側に付いていることが分かった

それをたどりキャニスターを探すとフェンダーの裏側インナーフェンダーの中にあった

接続されているホースはクラックでボロボロ

ここから空気を吸い込んでいる音が共振して音が出ているらしい

ホースを換えて接続をやり直して修理は終了

2日がかりで、ゴムホース一本交換なんて

割に合わない・・

2日分の工賃はもらえないし・・・